宝瓶宮占星学 ―宝瓶宮時代の新しい西洋占星術―
●第1稿 : 2013年 1月 9日
●『老子』73章にあるこの一文は、「天は悪を見逃さない」といった俗世の意味でよく訳されます。
間違いです。
第一、老子は「善」とか「悪」といった世俗の対象で物事をとらえる、孔子ような規範的解釈はしません。
この一文は、天子聖人に治世の在り方を諭したものです。
天の道は、無(恢恢かつ疎)であるが、為さずして成す(不失)という意味に解してこそ、老子の思想であり、その面目が立ちます。
現代風にいえば、社会主義(管理)ではなく、自由主義ということです。
「天網恢恢、疎にして失せず」
ご存じ『老子』の有名な言葉で、「天の網は広く粗いが失わない(洩らさない)」という意味で、先の2012年衆議院総選挙結果に当てはまります。
このページでは、「幻想的社会主義」すなわち共産主義政権を髣髴(ほうふつ)とさせた先の民主党政権を振り返り、時代の流れという「運勢(天運)」の一端をご紹介します。
海王星が魚宮の影響圏(水瓶宮25度)に達した2009年の総選挙では、小沢、鳩山、菅氏が率いる民主党が圧勝し、歴史的といわれる政権交代を果たしました。
自民党政権に嫌気がさした国民は、「一度やらせてみよう、ダメだったらまた戻せばいい」と、大半の人がその1票を民主党に投じたためです。
このとき、星の動きから、民主党に対して「幻想的社会主義(共産主義)」の予感をリーディングしていました。
それは当時、「新しい意識と夢想の2010年」や「友愛か独裁か? 小沢vs検察の真相」に書いたとおりです。
共産主義(マルキシズム)は、歴史的マニフェスト=『共産党宣言(Manifest der Kommunistischen Partei)』から始まり、労働者階級による「共産主義社会」を理想として掲げました。
民主党政権も、類似の星の動きによって「誕生」したからです。
詳細はおいおい述べていくとして、まずは小泉政権を引き継いだ「第1次安倍内閣の失敗」に触れておきます。
評価すべき業績は多々ありますが、時代の流れからみて、なぜ途中退陣しなければならなかったのか、その理由は次の2点です。
1、「戦後レジームからの脱却」の誤解もしくは時期尚早。
2、最初の訪問国に「中国」を選んだこと。
根本的にみれば、この2つです。
今回2012年12月26日、第2次安倍内閣が誕生しました。
第1次安倍内閣から約5年の時を経て、時代のディレクションに伴い、国内外の情勢は大きく様変わりしました。
例えば、国際情勢では「中国」の台頭と領土問題、国内的には「民主党政権」の失敗、その中間には「普天間移設問題」があります。
安倍氏は2012年衆議院総選挙の結果を受けて、早々に「アメリカ訪問」を表明しました。
One-Point ◆ 第1次安倍内閣における安倍氏の辞任理由は、「病気」だといわれています。しかし、本質的には、上の2点が根本の原因であって、関係筋の了解をえない「戦後レジームからの脱却」また「中国訪問」に起因し、いわば時代の流れ「運勢(天運)」を喪失した結果です。
●「戦後レジームからの脱却」は必要です。
しかし、時代状況という時や環境が整わなければ、理解が得られません。
世界と国を考えて断固、通さなければならないものもありますが、通常は理解が得られなければ、必ずしも「運勢(天運)」が伴うものとはならない現実があります。
第1次安倍内閣から5年が経って、「現代のターニングポイント」にも書いたように、「組織運営変革の深化」のディレクションが正式に始まるとともに、次第に時や環境が整ってきました。
時代の流れという「運勢(天運)」が、伴いつつあっての安倍氏再登板だということができます。
話は飛びますが、近年において「官僚」を使いこなした首相が2人います。
「日本列島改造論」の田中角栄氏と、「郵政民営化」の小泉純一郎氏です。
自由民主主義(議会制民主主義)による三権分立のもとでは、国民が「主権者」であり、国民によって選ばれた国会議員が権利を代行し、国民のために政治を行なうとしています。
実際はどうでしょうか。
「法治国家」の日本では、「法律」を熟知し、かつ「法案」の作成までも行なう「官僚」が実質、日本を動かしているといって過言ではありません。
「内閣総理大臣(首相)」といえども一時的に官僚の頂点に立つものであり、「官僚」に正面から敵対しては、日本を動かせないという現実があります。
かといって、どこかのドジョウさんのように「官僚」の傀儡(かいらい)になれば、「首相」を務める意味がありません。
当たり前のことですが、組織のTOP(首相)は、組織(行政機構)や部下(官僚)の在り方を熟知していなければ、納得させて動かすことができず、TOPが務まらないのは当然の理です。
その点、田中・小泉両首相は方法論は違っても、「官僚」を使うことができました。
小泉政権が誕生したとき、故・田中角栄の娘・真紀子氏を論功行賞によって外務大臣に任命しました。
真紀子氏が外務省を「伏魔殿」と呼んで官僚と対立したとき、小泉氏は躊躇せず、田中外相を更迭しました。
「一生懸命やったんですけどね…」
そう弁明しましたが、「コンピューター付きブルトーザー」と呼ばれ、官僚を操った父・田中角栄の片鱗さえ見せませんでした。
なぜ、自らが任命した田中真紀子氏を擁護せず、早々とクビを切ったのでしょうか。
なぜなら、官僚の協力なくして「郵政民営化」の大業は成せないためです。
昨年、「ポンコツ」大臣をかばったどこかのドジョウさんとは異なる決断でした。
冷徹に現実を見抜く山羊宮生まれ(太陽)の小泉氏の面目躍如、見識や胆識の一端を垣間見せたのです。
One-Point ◆ 両首相の大きな違いは国際認識です。「日中友好」を結んだ田中首相ですが、それは大局的判断というよりは、アメリカへの意趣返し。一方、小泉首相は、現実の国際情勢を見抜いたうえで、あえてアメリカに尻尾を振る態度をとり、海外への自衛隊派遣など日本の国際的な信頼と地位向上をなし、国内においては「郵政民営化法案」を通しました。両者のその後を見れば、どちらに時代の「運勢(天運)」があったのかは明らかです。
●時は、高度成長時代のお話です。
「日本列島改造論」によって、日本全国に「高速道路」を建設すべしと田中首相は指示します。
しかし、官僚は「財源(お金)がない」と抵抗します。
ならば「道路建設によって利益を得るドライバーから、税金を取ればよい」と「ガソリン税」の「暫定的アップ」を田中首相は提示します。
これには舌を巻くと同時に官僚は喜びました。
なぜなら、自分たちが使える「お金(予算=税金)」が増えるからです。
ッて「暫定」のはずが、いまだに「ガソリン税」は高く据え置かれたまま。
既得権益は、手離さないのが「官僚」です。なぜなら自分の出世に響く…。
小泉政権を引き継いだ第1次安倍内閣は、「美しい日本」という理想を掲げたものの、肩に力が入りすぎて「現実」を見失っていました。
しかし、今回の第2次安倍内閣の布陣をみると、一回りも二回りも「成長」し、「強かさ」さえうかがえます。
それはともかく、国会(国会議員)と地方議会には大きな違いがあります。
都道府県など地方議会は自治体つまり「内政」に目を向ければいいのですが、国会はそうはいきません。
「国」の舵取りは国会(国会議員)にしかできないからです。
具体的にいえば、「防衛(国防)」「外交」「通商(世界経済)」の3つです。
これは、国会議員の責務です。
首相や閣僚はもとより、国会議員は、世界の「軍事」「外交」「経済」の素養がないと大局的判断を誤ります。
加えて「官僚」や「官僚機構」の在り方を熟知しないと、何一つ動かせません。
では、2009年政権交代時の民主党はどうでしょうか?
当時「マニフェスト」に書かれていたことは、「国民の生活が第一」というコンセプトのもと、「脱官僚」「子ども手当て」「高速道路無料化」「在日米軍基地の見直し(普天間海外移転)」など「コンクリートから人へ」…。
耳あたりのよい大衆向けの内容で、「国家維持」にかかわる政策はおざなり、「利」によって国民を愚弄するだけで、政権を委ねるには肝心かなめの「国」が抜け、あまりにも危惧すべき国家の安全と平和を失した内容でした。
結果はご存じのとおり、外交・防衛オンチぶりをさらけだし、日本の国際的プレゼンスを大きく失しました。
さらには、「マニフェスト」の目玉さえ、ほとんど果たせず、「税金のムダ使い廃止」や「消費者を守る」という約束とは裏腹に、無策で官僚の言いなりに国債を大量発行し、逆に「しない」と言っていた「消費税増税法案」を成立させざるをえないというデタラメと体たらくぶりを見せつけたのです。
One-Point ◆ 少し極端なことを書きます。このような民主党政権の有様に、「天網」は、今後の世界と歴史に必要な日本の「運勢」と「プレゼンス」を保つため、「大地震」を招来しました。「犠牲」になられた方々には気の毒ですが、結果、日本と世界を救ったことになります。また、時の政権がダメなら、天皇によって国体の護持を図るのが、日本古来の「天運」の在り方です。
「マニフェスト」に「脱官僚」といった内容を掲げたのは、小沢氏です。
小沢氏は、かつての自民党幹事長時代のときから、国家権力を掌握しようとするとき、最も障壁となるのが「官僚機構」だということをよく知っているからです。
このような小沢氏の狙いを知っている官僚もまた、小沢氏らが率いる民主党への政権交代によって、当初は危機感を強めました。
しかし、世にいう「陸山会事件」で、小沢氏は強制起訴され、党員資格停止処分を受けます。
ここで思い起こしてほしいのは、今の宝瓶宮時代において「独裁」は、時代の流れという「運勢(天運)」に逆い、いずれは失うことを意味します。
そのような時代の「運勢」なのか、「官僚」の仕業なのか、検察は証拠不十分で不起訴にしたものの、検察審査会が1度ならず2度までも小沢氏を「起訴相当」としたのは、ご存じのとおりでしょう。
この裁判の途中、小沢氏は「消費税増税法案」に反対して民主党から除籍され、政権から離れて野に下ると、7月には「国民の生活が第一」を立ち上げます。
すると、あっさりと11月には上告断念で「無罪」が確定してしまいます。
政権与党から離れた小沢氏は、もう怖くないのです。
星のディレクションから申し上げますと、民主党政権のこの時期、「官僚組織」に敵対するのは無謀でした。
なぜなら、2011年〜2012年は、特に、最大の天運(活躍期)が「官僚」に訪れていたからです。
そういった運勢のもとにあった「官僚」にとって、「素人」政権の民主党など「赤子の手をひねる」ようなものだったでしょう。
ちなみに、あと2年、2015年になれば、「官僚機構」がひっくり返るディレクションに入っていきます。
つまり、2015年頃からが「脱官僚」のチャンスのときになります。
今は「みんなの党」や「日本維新の会」などが掲げる「ビジョン」や基盤を整えるなど、準備をし、そこからが実現に向かう可能性が開けていきます。
One-Point ◆ 似たような運勢は、「アメリカ謀略論」にもいえます。天王星の発見以来、このかた最も「天運」がある国家は、天王星の発見(1781年)時に独立戦争(1775年〜1783年)を闘い、独立したアメリカ合衆国です。天王星と共鳴する宝瓶宮時代への時代の流れや「運勢(天運)」は、ときにアメリカに味方する出来事を招来します。比較的ながら、なすことがうまく運びやすく、それがあまりにも都合よく現われた場合、アメリカによる「謀略」のように見えてしまうことが起こります。
●宇宙天体における海王星の公転周期は、165年です。
そのため、太陽系において海王星が発見された位置に戻ったのは、2011年になります。
しかし、ホロスコープ上では、2年ほど早く、2009年です。
基礎から学ぶホロスコープ「特別講座2:プラトン年の理解」をご高覧いただけましたらお分かりのように、ホロスコープの起点である春分点が、約72年に1度ずつ移動しているためです。
では、最後に海王星発見(1846年)は、何をもたらしたのでしょうか。
「友愛精神と海王星の象意」などに書いたとおり、一つはハイズビュー村で起きたポルターガイスト現象(1848年)に端を発する心霊主義(スピリチュアリズム)です。
これは、エドガー・ケーシー、マダム・ブラバッキーの神智学協会、シルバー・バーチなどへと続きます。
「現代西洋占星術の父」アラン・レオは、このとき神智学協会の占星術ロッジ(支部)で活動し、俗にいう昨今の新たな「西洋占星術」を広めました。
ゆえに、今の一般的な「西洋占星術」は、心霊主義(スピチュアリズム)の流れをくむ「秘教占星術(神秘占星術・オカルト占星術)」というのが実状です。
かつての古典占星術(学)のように、「哲学(哲理)」や「理論」を持たないためです。
もう一つ、海王星の発見によって始まったものがあります。
それがマルクスらによる歴史的マニフェスト=『共産主義宣言』(1848年)による共産主義運動です。
労働者階級による革命(レーニン武力革命)によって、「共産主義ユートピア社会」というまだ見ぬ「理想(幻想)」を掲げたという点では、「極楽浄土」や「天国」といういわゆる「理想(幻想)」を説いた歴史的宗教と同じパターンです。
唯物的な「マルキシズム」と唯心的な「スピリチュリズム」、双魚宮時代最後の究極の二元対立ですが、海王星発見によって「理想(幻想)」を夢見、活発化した必然です。
なぜ、このようなことを書くのかといえば、163年の時を経て、海王星がホロスコープを一周し、発見時の水瓶宮25度に戻ったのが2009年5月〜9月、「マニフェスト」を掲げて民主党政権が誕生したために、「幻想的社会主義政権」の予感をリーディングしていたからです。
事実、民主党も歴史的「共産主義」と同じように、実現不可能な「マニフェスト」という「理想(幻想)」を掲げて、政権交代を成しました。
当時、鳩山代表はいみじくも、「これ(政権交代)は革命です」と語ったのです。
その後、ソ連、北朝鮮、中国など、初期共産主義国家と同じように、内部の権力争い(路線闘争)によって分裂していきました。
共産主義の歴史的内実を知る人であれば、人民よりも自らの権力維持に迷走した共産主義と、自由民主主義の日本という枠組みの中での民主党は、酷似していたことが分かるでしょう。
民主党政権が「連合(日本労働組合総連合会)」や「日教組」などを組織票やバックにしていたことも、共産主義と酷似というか、明示しています。
One-Point ◆ ソ連は崩壊、北朝鮮は困窮、中国は共産主義が否定してきた資本主義経済を取り入れたご都合主義国家に成り下がりました。人類の「理想」へ向かう壮大な実験「共産主義(マルキシズム)」は失敗で間違いありません。結局、宝瓶宮時代の始まりとともに、ソ連は崩壊していきます。民主党政権も「国民の生活が第一」という「理想(幻想)」を掲げて失敗し、中国とともに、日本を危地に陥れました。それが逆に、第2次安倍政権を誕生させたのは、歴史のアイロニーというよりも、「天網恢恢疎にして失せず」ということの現われだといえます。
2012年衆議院総選挙の結果予測 ← BACK
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