宝瓶宮占星学 ―宝瓶宮時代の新しい西洋占星術―

ホロスコープ・リーディング
基礎から学ぶホロスコープ
第4回:古典占星術と現代占星術

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『フランケンシュタイン』を想起させる西洋占星術

今回は、西洋占星術を頭から信じている皆様は、ショックを受けるかもしれませんので、お読みにならないほうがよいかもしれません。
今日、巷間に流布されている西洋占星術は、19世紀末に神智学協会の占星術ロッジ(支部)としてアラン・レオにより新たなスタンスで解釈しなおされた現代占星術をベースにしているからです。

アラン・レオ

▲ Alan Leo(1860-1917)


●第1稿 : 2010年 6月24日アップ

《 伝統的な古典占星術の終焉 》

宝瓶宮時代の影響圏に入った1630年頃から古典占星術は危地を迎えます。
それ以前、ローマ帝国下においても、世俗の権力を握ったキリスト教によって、392年に異教禁止令が出され、キリスト教の以外を信じるものは異端とされ、占星術は禁止されましたが、今回は、近世におけるお話です。
最初の危機は、コペルニクスや当時のガリレオらによる地動説の台頭によるものでした。
天動説を信じてきた占星術は、天文学(Astronomy)が発達するにつれて、地動説が明らかになり、まさに足元が揺らいできました。 当時、最先端科学と思われていた占星術の非科学性が意識されだしたのです。
しかし、このころはまだ、何の得にもならない天文学にお金を出すスポンサーは少なく、占星術のほうが人々のニーズを占めていました。
占星術師として五分(クインタイル=72度)や転(インコンジャンクト=150度)といったマイナー・アスペクトを定めた天文学者ケプラーも、占星術の収入によって天文学を研究していたほどです。
第二の危機は、ニュートンらによって近代科学(古典力学)が発達していくことによって、科学的な理性に啓蒙された人々により、古典占星術は地位や信用が脅かされていきます。
そうはいっても、いつの時代も「信じる」といった人々はいるものです。
また、近代科学が発達したからといって、急激に占星術が「当たらなくなった」わけでもなく、何をどう認識するかといった根底の違いによって、やはり、「信じる」か「信じない」かということに落ち着きます。
そういった時代のうねりに揉まれながらも、古典占星術は、命脈を保っていました。

One-Point ◆ 双魚宮時代の西洋占星術は、古代ギリシャで体系化され、ローマ帝国、アラブ諸国、ヨーロッパにおいて発達してきました。しかしそれは、古典占星術であって、今日の一般的な西洋占星術とは、スタンスが異なるものです。当時の人々にとって古典占星術は、天体観測や高等数学を駆使した最先端の科学(擬似)として認識されていました。それゆえアストロロジー(Astrology=星の学問、天体の学)という名前で呼ばれているのです。


●ケレスの社会的な象意は?

ケレスが発見された1801年、つまり19世紀は、工業化社会へと大きく転換していきました。
それゆえケレスは、社会的には「工業」を象します。
ワットが蒸気機関(内燃機関)を発明したのは1786年ですが、最近、見直されているスターリングエンジン(外燃機関)は、1816年に発明されたものです。
電動機(モーター)の開発も19世紀に進みますが、1821年にファラデーがその原理を実験しています。
工業化社会は、このような動力の開発なしにはありえませんでした。
今年2月以降、ケレスは組織を象わす土星と矩(90度)をとる変革の星・冥王星への合(0度)に接近し、電気を象わす天王星と矩(90度)をとりはじめました。
この時期、昨年来からの電気系統のトラブルによる史上最大のリコール問題が大きな話題になります。
アメリカ、自動車、トヨタといえば、ケレスが社会的に象わす工業の象徴です。
このときの4月、トヨタの役員人事に変更はありませんでした。
2010年6月現在、ケレスは逆行によって、これらのディレクションからは、一時的に離れています。

《 天王星とケレスの発見ショック! 》

しかし、歴史の中で、ついに決定的な出来事が起こります。
天王星の発見です!
当初、彗星か何かだと思われていた星は、軌道観測の結果、土星の外側を回る惑星であることが確認されました。1781年のことです。
さらに20年後の1801年には、火星と木星の間に、最大の小惑星・ケレス(セレス)が発見されます。
古代ギリシャ、またプトレマイオス以来の古典占星術の体系は、二つの新たな惑星の発見によって根本から崩れていきました。
太陽から土星まで7つの星によって科学的に体系づけられ、信じられてきた古典占星術は、新しい星の発見によって拠って立つ基盤を失ったのです。
古典占星術が光りを失っても、これらの星の発見は、人類にとっては、希望を象徴するものでした。
天王星もケレスも、新たな社会態勢を象わすものだからです。
天王星は、人々の意識を自由に向けさせ、市民の権利が保障された自由・平等・博愛(友愛)の自由民主義体制へと人類を誘いました。
ケレスは、大量生産や消費への賛否や、環境汚染や公害などの課題があるものの、工業化社会による豊かな物質文明への移行を示しました。
これらの二つの星の発見は、人類歴史のパラダイム・シフトを意味したのです。

One-Point ◆ 天王星とケレスの発見は、実質的に古典占星術に終焉をもたらしました。この後も、1846年に海王星が、1930年に冥王星が発見され、現在の西洋占星術で使われる役者がそろいます。このプロセスにおいて、「あっ!」と驚くことが起こります。


●海王星の真価が問われる時代

19世紀後半のオカルト・ブームや共産主義思想の興隆は、「レクチャールーム(要ID&PW)」や、今年の近未来予測「新しい意識と夢想の2010年」などに書いたとおり、これらはすべて海王星の象意に基づくものです。
アランレオに始まる現代占星術も、当然、この海王星の象意に基づきます。
それゆえ現代の西洋占星術は、古典占星術が終焉したあと、双魚宮時代、最後のアダ花として位置づけられるというのが、宝瓶宮占星学の考え方です。
海王星は2009〜2010年に魚宮の影響圏に入り、2012年からは本格的に魚宮を運行します。
この魚宮の海王星がもたらすものは、昨今のAKB48に代表されるように、共鳴関係による新たなアイドル・ブームとともに、スピリチュアル(心霊)やオカルト(神秘)に真価を問うていきます。
「占い」としての西洋占星術も、その例外ではないのではないでしょうか。

《 オカルトに移植された西洋占星術 》

1846年の海王星の発見は、海王星の象意に基づいて、スピリチュアル(心霊)ブームやオカルト(神秘)ブームを世界的な規模で巻き起こしました。
その最中の19世紀末、「現代西洋占星術の父」とも呼ばれるアラン・レオ(1860〜1917年)は、立ち枯れた古典占星術を部分的に切り取り、また一部を拡大解釈することによって、新しいスタンスによる現代占星術を立ち上げました。
彼は、古典占星術の世界観や科学的体系をバッサリと切り捨て、「当たる・当たらない」の占いとして、占星術を庶民にも活用できる簡便なものとして提示したのです。
それはまるで、占星学において、実現不可能な理想を掲げた「共産主義思想」にたとえられるものでした。
皆様が今日、当たり前のように4,000年の歴史を持つ西洋占星術と、アタマからかたく信じているものは、実は伝統的な古典占星術ではなく、100年ほど前に神智学協会のアラン・レオによって新しく生み出された秘教占星術、また神秘占星術やオカルト占星術といっても過言ではないものです。
極めれば、100%近く当たるというものでもありません。
海王星発見以前、魚宮(双魚宮)の共鳴星(支配星)だった木星の象意に基づいて、高い精神性や哲学的な解釈(疑似科学)によって成り立っていた古典占星術は、今日では海王星の象意に基づいて、「当たる!」という幻想を抱いた神秘的(オカルトチック)な西洋占星術へと姿を変えていたのです。
それは似て非なるもの、解釈のスタンスが根本的に違うものです。
彼は、立ち枯れ同然だった古典占星術から、理解できない未確定な解釈の部分を取り除き、太陽を中心とした、誰にでも占える現代占星術を提示しました。
それによって未確定の要素の中にあった重要な解釈は失われましたが、要素を絞って断定的に強調することによって、一般人にも分かりやすい占星術にしたのです。
太陽を中心に占いますから、今後、どんな新しい星が発見されても、大勢に大きな影響を受けません。
事実、1930年に冥王星が発見されましたが、大勢が揺らぐことはありませんでした。
また、太陽を第1ハウス(室)におけば、さほど出生時間を重要視せずとも、生年月日のみで気軽に、誰でもを占うことができます。
こうして彼の占星術は、当時のオカルトブームに乗って、世界的に広がり、大衆化していったのです。

One-Point ◆ 勘のいい方ならお気づきのように、「レオ」という名前からアラン・レオ(本名:ウィリアム・フレデリック・アレン)は、獅子宮の生まれです。彼は太陽と共鳴する獅子宮の生まれであることから、太陽の象意が強いことに気づいたのです。獅子宮生まれの彼らしく、些細なことは抜きにして、大胆にポイントのみを強調した「占い」を見事につくりあげました。


●「星占い」の的中率

太陽を中心とした西洋占星術の簡易版が、誰でも知っている「星占い」です。
生まれた月日による太陽のサイン(宮)だけで占います。
約30%〜40%はいると思われる太陽サイン(宮)の象意の強い人には、けっこう当たったりしますので、簡便な割には案外と的中率は高いのです。


●アラン・レオの占星術の功罪

現代占星術において、ホロスコープ(天球図)は、四角から円形に変わりました。
また、アラン・レオが太陽をクローズアップすることで、サイン(宮)の象意や解釈が一層、明確になっていったのも大きな特徴です。
太陽を第1ハウス(室)におくソーラーサイン・ハウスシステムも、単に初心者向けとあなどれない有効な意義と価値を持っています。
アラン・レオの出身であるイギリスでも、よく活用されているハウスシステムです。
一方、彼は1年1度法といったプログレス法による未来予測を提示しましたが、占いとしてはアリでも、実星に基づくリーディングが基本スタンスの占星学にはそぐわないものです。
実際の星の動きに基づくトランシット法が、占星学による未来予測の本筋なのは、いうまでもありません。

《 フランケンシュタイン博士の怪物 》

そのため、今日の西洋占星術は、古典占星術の一部をオカルトに移植して「占い」として培養したアラン・レオの現代占星術をベースとしています。
その後、古典占星術の一部のノウハウのみを再び取り入れたり、一見、現代科学風の真偽が定かでない新しい解釈技法を取り入れたりして、今やつぎはぎだらけの怪物のような様相を西洋占星術は呈しています。
今日の西洋占星術が、どんなに「科学的解釈」を装っても、また「占いでない占星学」と言い張ってみたところで、「母体」が19世紀後半のスピリチュアル・ブームや神秘主義(オカルティズム)をベースとしているために、言いつくろうほどに見苦しくなります。
「占いでない占星学」といっても、オカルトチックな「占い」であるアラン・レオの占星術をベースとしているために、どこか勘違いしてしまうのは仕方のないところです。
何の疑いもなく今日の西洋占星術をアタマから信じ、技術のみを一生懸命に学んでいる皆様方には見えてこないと思いますが、その姿は、シェリー(1797-1851年)の小説『フランケンシュタイン』の主人公の怪物のように見えます。
死体の断片をつぎはぎして、生き返らせた可哀想な人造人間の姿が、現在の西洋占星術であるといったら言い過ぎでしょうか。
こうやってみたときに、今日の西洋占星術を、ハーモニクスだ、サビアンだ、ハーフサムだ、小惑星だ、13星座だ、ソウルメイトだカルマだリリスだボイドだと、小手先だけでいじくりまわしても、正しい解釈が見えてくるものではないことがハッキリと分かります。
「人造」の西洋占星術ではなく、「宇宙」の根源に立ち返ったナチュラルな占星学を構築しなければなりません。
太陽系の星々の動きをホロスコープに写し取って、リーディングしていくのが占星学の基本スタンスです。であれば、素直に宇宙の理(ことわり)に立ち返って、根本から構築していくべきなのは当然です。
一部では、古典占星術に立ち返ろうとする動きもあるのですが、古代ギリシャの世界観ではなく、人類の未来に相応しい宇宙観に拠らなければなりません。
結局、新しい宇宙時代の土壌の中に、基礎理論のタネから蒔いて、ホロスコープを原点から解釈しなおさなければ、今後、約2,160年間続く宝瓶宮時代を生き抜く占星学とはならないのです。

One-Point ◆ 西洋占星術を頭から否定するものではありませんが、今のままでは、いずれ古典占星術の轍(わだち)を踏むことが見えています。新しい西洋占星術の構築が必要です。ホロスコープの語源が「時の見張り番」である以上、占星学自体も、時代を見張りつつ、新しく変わっていかなければならないのではないでしょうか。


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